◆運動会では手をつないで一斉にゴールするべき?
そもそも「国家」の役割ってなんでしょう。
門外漢なので「国家」に関する哲学的命題に取り組むつもりはありません。
重要な役割の一つは、富の再分配をすること――。高校生のころ、私はそう教わりました。当時の私は、税金とは警備料金と保険料金だと理解していました。貧乏人が増えると(シムシティのように)犯罪が増加するであろうと想像できます。将来、自分がどんな理由から貧困に陥るかわかりません。
情けは人のためならず。富の再分配は、ぐるっと一周して自分のためになります。そしてどんな国にも、再分配のための仕組みがある。
額の多寡にかかわらず、再分配はどうしても必要なものなのでしょう。
ところで、ここに面白い調査報告があります。
日本の所得再分配―国際比較でみたその特徴
内閣府2006年12月
http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis180/e_dis171.html
要約:日本は再分配の前の所得では比較的平等な方である。しかし、再分配が小さいために、再分配後の可処分所得では不平等な方になっている。
再分配の小さい理由は3つ。
1)労働年齢層への給付が小さい
2)税による再分配が小さい
3)家族政策支出等が小さい
これらの理由から、低所得層・とくに若年労働層や子供のいる世帯の貧困度を高めている。
要するに、日本は再分配がぜんぜん上手くいっていないよ、というのがこの報告書の内容です。日本は、お金持ちと貧乏人から等しくお金を巻き上げて、お金持ちと貧乏人に等しく振り撒いています。お金持ちはお金持ちのままですし、貧乏人は貧乏人のままです。再分配をうまく機能させなければ、貧困は解決しません。(私は格差は問題だと考えていません。問題は貧困です)
ここでもう一度、昨日お見せした表を思い出してください。
この通り、所得税は毎年減税され、代わりに消費税が増税されています。所得税に限らず、日本はこの20年間、たびたび減税を行ってきました。「景気対策のため」という名目です。
しかし減税の方針は、基本的に「お金持ちへの課税を、中産階級や貧乏人と同じぐらいにする」というものでした。累進課税をとる所得税には、はっきりと表れています。結果としてお金持ちへの課税は少なくなり、相対的に低所得者への課税が重くなりました。
逆の言い方をすれば、課税は平等になったのです。
世の中には「不平等は許せませんわ」という方たちがたくさんいるみたいです。
◆父「学校やめてくれ」 娘「父さんお願い働いて」
いうまでもなく日本は巨額の借金を抱えています。私が物心ついたころからずっと、政府は「財政を改善させる」ことを目標に苦心していました。小泉内閣時代から、増加幅は少しずつ抑えられ、最近ではようやく減少に転じていました。が、いまだに天文学的数字が残っていることに違いはなく、また「無理な返済方法」のツケが回ってきています。
すでに書いたとおり、日本はこの20年間たびたび減税を行ってきました。
減税をしながら「財政難だ、苦しい」と言ってきたわけです。
減税と借金返済を両立させるためには、支出を削らねばなりません。社会保障が大きく削られてきたのはそのためです。そして今、軍事費の削減がまじめに議論されるようになり、消費税の増税にいたっては「ほぼ確定したこと」として語られるまでになりました。
収入を絞って、借金を増やして、そりゃサイフ事情が苦しくなるのは当然だと思うのですが、いかがでしょうか。
◆出費が増えることには無関心でいられる
とはいえ、政治家は「所得税の累進をきつくします」とは言いません。票が集まらなくなるそうです。選挙ってよくわかりませんね、有権者って不思議なもので「消費税をあげることはやむを得ない」という意見は平気で言うのに、所得税をあげることについては目くじらを立てて怒るそうです。
さきほどの表を見れば判るとおり、所得税の税率が90年代前半の水準へと戻った(増税された)場合でも、年収400万円に満たない私にとっては痛くもかゆくもありません。消費税について、いまよりも5%〜10%の増税が必要だと言われています。おそらく年収600万円ぐらいの世帯までは、消費税による負担増のほうが大きくなるはずです。
こちらに年収別世帯数のデータがありますので、90年代前半の税率に戻った際に税収がどのようになるか、興味のある方は計算してみてはいかがでしょうか。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa08/2-2.html
※本当に「消費税の増税が必要ない/増税しても微々たる額」という結果になって笑えます。
よくある反論:
「消費税は使う時に払う税だ、お金を使うか使わないかは選べる。所得税はお金を使うかどうかに関わらず徴収するからフェアじゃない」
貯蓄のことを言っているのでしょうか。貯蓄は将来の消費です。貯蓄に回したからといって、消費税の支払いが未来に先送りされただけだと思います。
よくある反論2:
「所得税の増税で損をするのはサラリーマンだ。経営者や自営業者は支払う所得税の額を自由に操作できる(損金の額を自由に操作し、課税所得を調整できるから)しかしサラリーマンは源泉徴収されてしまうので、節税できない」
所得隠しが横行することを杞憂している意見です。この反論については、まず税務署ちゃんと仕事しろってことですよね。課税所得を自由に操作できるという発言は詭弁にすぎません。税務署って我々が考えている以上にきちんと仕事してます。
また、所得税の税率を元に戻すと負担増になり、なおかつサラリーマンをしている人って、どんな人でしょう。つまりは高収入で、かつリスクテイクのない生活をしている人です。この国ではすでにごく少数でしょう。一部の恵まれた人たちを守るために、大多数に負担を求めるのはおかしくないすか?
少なくとも私にとって、消費税増税の負担のほうが重いです、所得隠しの有無にかかわらず。
よくある反論3:
「所得税の増税は高所得者のやる気をそぐ」
企業の役員やお医者さんは、収入が減ったからといって「仕事やーめた」とは言わないと思います。
◆だから要するに
消費税を増税すると、間違いなく景気は悪化します。そのため日本でも、消費税の導入や増税に前後して他の景気刺激政策が行われてきました。消費税は消費を圧迫し、景気を減速させる要因になります。これは衆人一致の見解で、政治的な立場を問いません。(ですからどの政党も、無条件に「増税する」とは言っていないはずです。消費税による景気後退をどのように吸収するか腐心している)
しかし今起こっている問題って、おおむね景気が悪いことが原因だと思うんですよね。景気が好転すると、まず貧困が解消されます。不況しか知らない私たちには想像できませんが、競争力の無い企業の淘汰は好景気のほうが進むそうです。景気がよくなると人手不足が進み、人件費が高騰します。すると給与の支払い能力がない企業は人を雇い続けることができなくなり、解散に追い込まれます。日本企業の多くは「正社員にとても甘い」制度を維持しています。そういった手厚い福利厚生制度は、高度経済成長のころ(つまりは好景気で人手不足だったころ)に発展したそうです。いわゆるブラック企業は、景気が好転すると駆逐されます。もちろん、税収増から国家財政も改善するはずです。
富の再分配をどのようにするか、さまざまな対立軸が持ち出されます。
「都市から地方へ」
「高齢者から若者へ」
「正社員から非正規雇用者へ」
「男性から女性へ」
言うまでもなく、東京にもワーキングプアはいますし、田舎にも金持ちはいます。餓死する高齢者もいれば、左うちわな若者もいます。正社員でも時給でみると最低賃金を割っている人がいますし、ネオニートとして悠々自適な生活を送る非正規雇用者もいるわけです。
こうした対立軸は、ものごとを表面からしか眺めていません。オブラートに包むのはもうやめにしませんか。
はっきり言うべきです。
「お金持ちから貧乏人へ」
この一言を胸を張って言える政党・政治家があまりにも少ないこと。
それが日本の不幸ではないでしょうか。

